先日(2023/7/23)行われた「近畿APD当事者会主催 聞こえを補う機器の体験会」ではソノヴァ・ジャパン株式会社が出展しており、ロジャーの試聴を希望される方が大勢集まっていました。僕はオンラインセミナーのみ参加でしたが、大阪公立大学の阪本先生や、近畿APD当事者会の渡邉さんのお話のなかでも、ロジャーの説明が多くなされていました。
ちょうど2年前の夏、懇意にしているソノヴァ・ジャパン株式会社の営業の方から「APD × ロジャー」これから注目ですよと聞いて、初めてAPD × ロジャーの記事を書きました。
聴覚情報処理障害(APD)とは 補聴援助システム「ロジャー」による効果を探る(2021/7/17)
当時は情報も少なく手探りのなかでの発信でしたが、この2年間で情報や知見も揃ってきて、メーカーとしても今回のようなブース出展ができるようになり、非常に嬉しく思っております。
APD当事者に対して、初の自治体助成が報告されています!
今まで自治体の助成に関しては
聴覚障害程度等級(2級 / 3級) 重度・高度難聴(手帳あり) 障害者差別解消法
聴覚障害程度等級(6級 / 4級) 軽度・中等度難聴(手帳なし) 自治体ごとの難聴児補聴器等購入費補助事業
の2種類の助成がなされていました。
APD に関しては、聴力に問題がないとして等級の判別ができず身体障害者手帳の発行ができないので、障害者差別解消法では対応できず、また自治体ごとの補助事業でも対応ができていませんでした。
奈良県大和郡山市
昨年、同市にお住いのAPD当事者の方がお子さま(医療機関でAPD の診断済)のロジャー購入助成を求めて市議会議員の方に掛け合い、議員さんが前向きに取組んで下さった事例があります。奈良県は国が補装具の助成一覧から「FM受信機」を削除した際に支援機器リストから一緒に削除したままになっていて補聴援助システムの公的支援や導入が遅れる原因になっていたこと分かり、奈良県議会での問題提起を経て、見直しが図られました。
その結果、奈良県のサイトの「軽度・中等度難聴児への補聴器購入助成について」ページの対象児童の欄には、
両耳の聴力レベルが原則として30デシベル以上70デシベル未満である者
ただし、障害者の日常生活を総合的に支援する法律第59条第1項に定める指定自立支援医療機関
(耳鼻咽喉科に関する医療)又は知事が別に定める医療機関の医師(身体障害者福祉法15条指定医師も含む)
が装用の必要を認めた場合は、この限りではない。
という文言が加筆されました。つまりAPD のように、従来の軽度・中等度の聴力レベルに限らずとも、医師の意見書があれば助成の対象になるということです。大和郡山市の助成金交付要綱にも同様の文言が追加されております。
(参考)
難聴児補聴器購入費助成金交付要綱 (大和郡山市)
京都府京都市
先日の近畿APD当事者会のイベントの翌日に「京都市でAPD当事者への補聴器助成の申請が受理された」というニュースが入りました。この当事者のお母さまからは、当サイトにも相談を受けておりましたので、そのご報告もいただきました。今回はロジャーは間に合わず、補聴器のみの助成ということでしたが、APD当事者に対する助成はおそらく全国初の事例と思われ、非常に画期的なことではないかと喜んでおります。今後ロジャーに対する助成も進んでいくことを期待します。
遡って「令和2(2020)年度の全国自治体の助成制度調査」の結果をみてみます
正式な調査名は
「令和 2 年度 軽度・中等度難聴児に対する補聴器購入費用助成制度の地域差に関する調査報告」
調査元は
「日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会・日本臨床耳鼻咽喉科医会 合同委員会
福祉医療・乳幼児委員会」
となります。
調査対象は全国47都道府県+20政令指定都市の67自治体となっています。
13ページからなる6ページに「聴力正常の聴覚情報処理障害などに医師が必要と判断すれば助成可能か」という質問に対して、67自治体のうち16自治体が「WHS・HA ともに可」と答えています。
WHS:Wireless Hearing System(無線式補聴援助装置:リオン社製 FM 補聴システム、Phonak 社製 Roger システムなど)
HA(Hearing Aid):補聴器
と定義されています。つまり全国の自治体の約4分の1弱に当たる16自治体で「APD当事者に対してロジャーの助成が可能」と答えているということが既に3年も前に報告されていることになります。
(2023/08/10 執筆)
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