大学 障がい学生支援 ご担当者の疑問に答える(3)学生個人所有の補聴援助システム「ロジャー」の使用許可だけで大丈夫?

 

最近、大学の障がい学生支援のご担当者と話をしているなかで、よく話題にのぼる内容の4点に関して順番にお答えしています。

(1)合理的配慮への対応、この先の展望はどうなんでしょう?
(2)ロジャーって、発達障がいの学生にも効くって聞いたけど、実際のところどうなんですか?
(3)学生が個人所有のロジャーの授業利用を許可している。それで大丈夫でしょうか?
(4)今は難聴の学生はいないけど、来年に向けて予算どりを考えています。その場合の機種構成は?

 

ここでは(3)に関して、お答えしていきます。

 

障がい学生支援部署のご担当者の話を聞くと「うちは学生所有のロジャーの授業での利用を許可していますから大丈夫です」という声を多くいただきます。ここで「個人所有のロジャーの利用許可」と「大学でのロジャー購入」に関してメリット / デメリットを比較してみましょう。

 

学生個人所有の「ロジャー」の授業での使用を許可する  
良いところ / 便利なところ  

①その学生自身がロジャーの扱いに慣れており、大学から授業での使用許可さえ下りれば、教員への説明は自分で行える。

 

②障がい学生支援の担当者の負担がほとんどかからない。

 

③大学側で導入コストがほとんどかからない。

 

足りないところ / 苦労するところ  

①支援部署サイドで、支援の効果測定がしにくい。該当学生にヒアリングするしかないが、本人所有のものということもあり、ヒアリングもしにくい。

 

②教員の過失で機器を壊してしまった時、修理代負担の責任の所在が不明確になり、学生個人の負担となるケースもある。

 

③ロジャーを所有していない、他の聴覚障がい学生からの支援要請があった時に、すぐに対応ができず、本来あってはならない「合理的配慮の差」が起きてしまいかねない。

 

④大学側で「ロジャーに関するサポート」を販売店やメーカーに依頼したくても、個人所有のため、遠慮が生じてしまう。

 

⑤大学の支援部署やコーディネーターに、「ロジャーによる難聴学生支援の知見やノウハウ」が貯まらない。

 

 

大学側で「ロジャー」を購入し、学生に貸し出す  
良いところ / 便利なところ  

①大学で購入することにより、支援部署の担当者やコーディネーターに責任感が生まれる為、販売店やメーカーのサポートが受けやすく、支援メソッドのノウハウが蓄積できる。

 

②そのノウハウの蓄積により、新年度ごとの新しい支援要請にも、スピード感がある的確な対応ができる。

 

③大学のサイトの支援部署のページに支援事例として掲載ができ、また入試前やオープンキャンパス時の対応も可能となり、大学としての支援に厚みができる。

 

④運用が軌道に乗ると、担当者の手離れが良く、ボランティア学生などの必要がない。

 

足りないところ / 苦労するところ  

①教員への支援要請は、支援部署から行うことになり、機器の使い方などはある程度習熟する必要がある。

 

②導入のためのコストがかかる。ただしノートテイク / PCテイクの運用と比べ、継続してはかからない。

 

③導入時の担当者から別の担当者に業務を引き継ぐ際に、機器の特殊性ゆえ少しハードルが高い。新任の担当者がロジャーについて掌握できていないと、活用ができなくなる状況にもなりかねない。

 

④受信機は各難聴学生が装用している補聴器 / 人工内耳専用の機種の購入は難しく、ある程度汎用性がある機種(ロジャーネックループなど)に限られる。よって支援要請があった際の都度対応となるケースもある。

 

 

国立 T 大学様のケース

「うちでは、最初は学生個人所有のロジャーの、授業での利用許可のみでした。それまで私もロジャーは知りませんでした。その学生は聴覚支援学校でロジャーを使っていたので、機器の操作にも慣れており、問題なく授業を受けておりました。

 

しばらくすると教員から「あのロジャーってマイクはいいね」とフィードバックがあり、大学でもその学生が使っていたものと同じ機種を購入し、他の難聴学生の支援にも活用しています。

 

その学生が、今年出た新機種をやはり個人購入して使い始めているので、また参考にして、大学側での購入も検討しようと思っています(笑)。ロジャーに関して、まだまだ勉強不足なので、いろいろ教えていただきたいです」

(国立 T 大学 障がい学生支援担当 K 様談)

 

(画像はイメージです)

 

(2022/09/02 執筆 2024/01/17 妥当性判断)

 

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